リトリーバルトレーニング(学習)を活用して勉強する方法とは??漢検3級を題材に学習方法をご紹介します。
約10年前ぐらいに効果の高い記憶術としてリトリーバルトレーニングというものが提唱されたことを以前ご紹介しました。ものすごく簡単に言うと、記憶はインプット(覚える)過程より、アウトプット(書いたり、話したり、説明する)過程を経た方が定着するというトレーニング法です。
言葉を習得する2歳前後の子どもは、親や周りの人々から聞こえてくる声や音を真似て声に出してみることでどんどんと言葉を覚えます。概念として知っていても、実際に使わなければ、記憶には定着してこないのです。
したがって、教科書を黙々と繰り返して読むより、音読する、要点を紙に書き出してみる、要点を友達と議論する、説明をするといったアウトプット作業によって脳内のどこかしらに入って埋もれてしまった記憶の断片を"retrive"リトリーブ=取り戻し、救い出してあげることが必要なのです。
そうは言っても、具体的にどのようにアウトプットすれば良いのか。という点について複数の質問をいただきましたので、漢検の学習を通して、リトリーバルトレーニングの活用方法についてご紹介します。
このノウハウは、漢検だけでなく、定期試験や各種資格試験など、何にでも応用が可能なものですので、ぜひマスターをして役立てていただければと思います。
アウトプットの前提となるインプット!!
アウトプットこそが記憶力を高めてくれる秘訣なのですが、出力する前提がなければ、何も出てこないのは当然のことです。からっぽのコップをどれだけ傾けてみても、水を出すことができないのと同じように、出すべき水を入れておく必要があります。
ただ、インプットもただやみくもにすれば良いわけではありません。私たちの目標はアウトプットをしていつでも取り出せる有益な情報を獲得することにあります。そうだとすると、インプットの方法もアウトプットに適する形で入れておくことが重要になります。
このことの意味をわかりやすくするために、ここで、もうひとつ例をあげておきましょう。例えば、苦手な社会のテストを受けた時、答えがさっぱりわからないということで、空欄のまま提出してしまいました。一夜漬けではあるものの、テスト範囲のプリントを前日に数回見直してはいたものの、答えの見当がつかない。そんなことはないでしょうか?
後日、答案が返却され、模範解答を見ると、なんだ!!この答えでよかったのか??それならば知っていたから非常に惜しかったと悔しい思いをする。こういった経験は誰しも一度ぐらいはあるのではないでしょうか。
この場合も、インプットはしているのです。だから解答を見れば、その言葉は知っているのです。しかし、そのワードがどのような文脈で聞かれるのか?密接に関連するキーワードは何か?どのような理解を聞きたいときにその問題が出題されるのか?といった点まで押さえていなければ、そのインプットは得点に結びつきません。
したがって、アウトプットが意識できたインプットでなければ、どれだけ時間をかけても意味がないことになってしまいます。
短時間で何度も耳から繰り返すことができるようにYouTubeを利用
そこで、今回漢検を学習するにあたっては、YouTubeに問題と解答を写しかえることにしました。その心は、人間の進化の過程にあります。人類が文字というものを開発する以前は、情報のやりとりは、すべて音声情報に頼っていましたので、人間も本来は視覚より、聴覚の方が優れていることがわかっています。
勉強と言うと、本の形で出版されている漢検の問題集や過去問を実際に解いていくスタイルが一般的でしたが、エビングハウス先生が言うように、我々の記憶は1時間で半分消えます。(たった1時間で半分忘れるってコスパ悪すぎですよね。)
でも、忘れるものは仕方ない。繰り返すしかないですよね。その時に、視覚情報だけでなく、耳からの音声情報として短時間に何度も繰り返しができたら、忘れることに抗うことができます。人間のより能力の高い聴覚を利用しかつ、繰り返し学習をしやすいというのが第一の目的です。
まずは、読み取り編からの学習になりますが、以下のような動画を作成しました。
まずは、5秒間で力試しをしていきます。
漢検に頻出の漢字を20問ずつ出題しています。一問当たりの解答時間を5秒に設定しているので、まずは口頭でブツブツ言いながら確認してください。(周りに人がいなければ、必ずブツブツ言ってください。頭の中で判断するより、ブツブツ言いながらすることは、これもアウトプットの一貫になります!!)その後、読み方の解答例が表示されるので、正誤を確認してください。その際、POINT欄に言葉の意味や、漢検の他の出題形式である類義語、対義語、四字熟語などを載せてあります。ここでも、できれば書かれていることをブツブツと音読してください。
漢字の学習で大切なことは、ただ読める、ただ書けることではなく、言葉の意味を捉えて文章読解力をあげることにありますので、それらも意識しながら、最後まで目を通していきます。一日6分で完結します。
これで、アウトプットの前提となるインプットの完了です。
アウトプットの最初は、24時間以内に実施してください!!
ここから、本格的なアウトプットに入ります。エビングハウス先生の研究によると記憶率33%まで低下する24時間以内に復習をすることで、記憶は一旦100%まで戻るとのことですので、必ず24時間以内に同じ動画を聞いてください。ブツブツ言いながら。
でも、最初と同じように6分かける必要はありません。YouTubeで2倍速にしてください。一度見ていれば、判断に5秒もいりません。2.5秒で瞬時にブツブツ言います。1回目わからなかったものは、おそらく24時間後もわかりません。人間の能力は所詮そんなものなので、心配しないでください。
わからなかったものは、再度その場で解答を確認。解答解説もブツブツ言ってください。
アウトプットの第2回目は一番初めの学習から1週間以内 さらに前に進めるには?
1回目の学習から24時間以内の復習で、一旦100%に戻った記憶も、エビングハウス先生によると再び忘却が始まっていきます。が、2回目の記憶は中期的な記憶となっているので、その忘却は緩やかになることが知られています。
そこで、次の復習は、2回目の学習から6日後、最初の学習から1週間後に行います。方法は、先ほどと同じ、倍速にしたYouTube動画を視聴します。さあ、どれぐらい覚えているでしょうか。
最初は読めなかった漢字も、懐かしい親戚のおじちゃんレベルに馴染んできているはずです。目で見る、耳で聞く、ブツブツと音読する。アウトプット前回です。
がしかし、漢検って書けって言われますよね??言えても書けるか心配ですってなりますよね?そこを心配できたら、合格へまた一歩近づきました。なぜなら・・・。
漢検だけでなく、英検を受けたことある人。勉強って計画的に進みました?受けること自体が義務ではないので、やばい!!来週本番だ!!というところまでみんな放置してしまうのです。やらなきゃとはわかっていてもやらない??いややれないのです。人間は怠け者なのです。
だから、毎日ついつい見てしまうYouTubeの中に学習コンテンツを入れ込んだのです。気づくと2時間、3時間と見てしまうYouTubeの視聴時間の3分だけ私にください。お願いします。
その3分が続けられたら、もっと漢字を読みたい。書きたい。合格したいと気持ちが変化しているはずです。書いて練習しておきたい。安心してください。そんな時のツールも用意しました。
このような解答用紙を別に用意しました。全部で4回繰り返せるようになっています。もし、書く!!というアウトプットも活用したい方は、下の問題集の一覧ページより、ダウンロードしてください。A4横サイズでおさまります。
初日のYouTubeを見た後に、一番下の1回目の欄に解答を書いてみてください。書けたときの答え合わせですが、動画を倍速でも3分見るのが大変というものぐさな人のために、それぞれの問題に最短アクセスできるキャプチャーを設定しましたので、サクサクっと確認してください。間違えた問題、わからなかった問題、あやしかった問題があれば、2回目の問題番号に〇をつけておいて、一日目は終了です。その際、1回目の解答欄を裏に折り曲げて、翌日の復習時には見えないようにしておいてください。
前日の学習から24時間以内に、1回目の復習です。翌日問題番号に〇をつけた問題のみ、解答用紙に答えを書いていきます。どうですか?覚えていますか?
できたら、解答確認ですが、〇をつけた問題以外も心配であれば、倍速で3分間、全20問を解答してみてください。答え合わせまで終わったら、また間違えた問題、わからなかった問題について、3回目の問題番号に〇をつけて、2回目が見えない部分まで折り曲げておいて、1週間寝かせます。
2回目の復習は、1週間後!!
2回目の復習は、最初に解答をした時から1週間後です。解答用紙を使う場合は、3回目の部分にあらかじめ日付を書いておくと、忘れにくいと思います。わざわざ書く練習は面倒くさい!!という人は、YouTubeだけの学習でも大丈夫です。まったく勉強せずに受けた前回よりは、理にかなった学習を重ねているのですから。1週間後に倍速視聴で定着度の確認です。
いや、私は書くよ。絶対に合格したいからという人は、3回目の解答欄で問題番号に〇がついているところだけやってみてください。解答例では、3回目になると3問だけです。瞬殺です。その3問分だけ動画のキャプチャーで解答を確認して終えてもいいですし、倍速再生で3分間確認してもどちらでもいいです。
しかし、これは他の学習にも言えますが、できているもの、わかっているものは復習しなくても、正しい答えの再現は可能です。なぜなら、脳の神経回路が構築できているから。なので、3回目以降は時間を有効に使うためにも、2回目まででできなかった部分の復習のみで十分。残った時間は他の問題のインプットや復習にあてるのが得策だと思います。
3回目も終えて、万が一間違えてしまうものがあれば、4回目の問題番号に〇を打って終了です。次回は、その日から2週間後。
最後の復習は、最初に学習した日の3週間後に実施します。
継続は力!!とはよく言ったものです。続けるのって大変ですね。でも最後です。最初の学習から1か月以内に全部で3回学習すると、脳はその情報にはたびたび触れているので、大切に違いないということで、長期記憶の倉庫に入れてくれます。自分の脳でありながら、こういうプロセスを踏んであげないと、あなたの脳は覚えるべき情報であるとインプットしてくれないのです。何とも手間のかかる「脳」さんですが、いつでも取り出せる長期記憶としてインプットしてもらうためには、1か月という期間内での繰り返しのアウトプットが必要だとわかってきたからこその、リトリーバルトレーニングなのです。
したがって、仕上げをしましょう。最低限ブツブツ言いながらのYouTube聞き流し、万全を期すならば、4回目の復習を行った後に、動画を視聴してください。
これで、20問の脳内インプットは完了です。でも1か月で、6分、3分、3分、3分の15分で完了です。ノートに呪文のように100回とか書くのはやめてください。意味ないですから。書くならば専用の解答用紙に意味を確認しながら、徐々に量を減らしながら、わからなかった部分だけで十分です。
ありとあらゆる方法に使えるリトリーバルトレーニングです。
今回は、漢検の問題を使って、リトリーバルトレーニングの具体的な学習方法について説明しましたが、同じ方法を用いれば、ありとあらゆる定期試験、資格試験に対応可能です。というか、脳のメカニズムからすると、試験に出る情報を長期記憶倉庫において置くための不可欠のプロセスですので、これをやる以外にないというのが本当のところです。
まずは、漢検で実践して、あなたの学習方法を確立してください!!
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