人類最強の強み!!あなたの「自制心」診断 さっそくチェック!!非認知能力③
非認知能力の中で、「人類最大の強み」と言われる能力があるのをご存じだろうか?この能力に高いスコアを示す人々は、学業成績が高く、うつ病などの心理的な問題を抱える確率が低いことがわかっている。また、アルコールや薬物への依存リスクも低く、幸福度の高い良好な対人関係を築く傾向が見られるという。
あなたに「人類最強の強み」は備わっている?
それでは、あなたにこの能力は備わっているだろうか。さっそくチェックリストで確認していこう。5つの項目のうち、いくつあてはまるかを確認して欲しい。
- 気心の知れた友人との待ち合わせには少し遅れてしまうこともある。
- ショッピング中に魅力的な物を見つけたらその機会を逃さないように即GETする。
- 色々な食べ物を味わうことができる食べ放題やビュッフェではついつい食べ過ぎてしまう。
- ダイエットや禁煙など目標に掲げたことも、今日だけ特別!!と例外の日を作ってしまう。
- 1か月先が期日の課題や、学校の夏休みの宿題がやり切れないことがある。
いくつ○がついただろうか。このチェックリストで判定できるのは、非認知能力のうちの「自制心」と呼ばれる能力だ。自己制御能力、自己コントロール能力と言い換えてもいい。
さあ、それでは結果をお伝えしよう。このチェックリストでひとつでも○がついた場合、「自制心」を改善していく余地あり!!と言わざるをえない。たしかに、チェックリストに意地悪な部分がないわけではない。たとえば、リスト1について、今日が大切な受験の日であれば、開始時間には絶対に遅れないけれど、気心の知れた友人との約束には、少しぐらい遅れてもいいよね?という甘えも許されるのではないか。
リスト2については、買い物中に超魅力的な物が見つかり、それがどんどん売れていたら、仮に不必要なものでも、つい買ってしまう。限定品と言われるとつい買ってしまう心理と根本は同じである。
「自制心」に対する最大の敵は??
しかし、「自制心」にとっての最大の敵は、ダイエット中だけど、今日くらいはいいよね?と夜中にお菓子を食べてしまったり、大事な試験の前日に思わず触ってしまったスマホに没頭してしまったりといった、日常生活で次々に襲ってくるほんの少しの「甘え」に他ならない。1度の甘えが2度、3度と増えていき、最終的には自堕落な状態に陥ってしまう経験は誰しもあるのではないだろうか。
とはいえ、それでは本能のままに生きる動物と何も変わらなくなってしまう。目標を立て、どのように遂行をするかを決め、それを実行に移したり、現在の状況をモニタリングしながら、自分の行動を制御していく自制心は、人間しかなしえないという点で、「人類最強の強み」と称されるのである。
そんな「自制心」が非認知能力として重要だと認められるきっかけとなったのは、1960年から1970年代にかけて行われたマシュマロ・テストと呼ばれる次のような実験の結果による。
アメリカ、スタンフォード大学の心理学者だったウォルター・ミシェル氏は、実験室にいる4歳の子どもにマシュマロを1つ渡し、「このマシュマロを、15分間食べないで我慢できたら、もうひとつあげよう。」と告げて、子どもを一人きりにする。
ただちにマシュマロを食べてしまう子どもがいる一方、別のことを考えて気を紛らわそうとがんばる子ども、マシュマロが見えないように後ろを向いて15分経つのを待つ子どもなど、様々な反応が見られた。
そして、ミシェル氏がその子どもたちの追跡調査を行ったところ、マシュマロを食べないで我慢できた子どもは、SAT(大学進学や就職で求められる統一試験)の点数が高かったり、中年になったときの肥満指数が低く、健康管理ができていたりするという結果が得られた。
ここまでで、「自制心」があなたの人生の成功を引き寄せる大切な要素だということはご理解いただけたのではないだろうか。それでは、この「自制心」をどのように育み、強化していくのか。それがあたなにとっての最大の関心事になっていることと思う。そこで、ここからは、「自制心」が自然と育まれ、あたなやあなたの家族が幸せを享受できる生き方を確立する方法について紹介をしよう。
「自制心」は働かないのではなく、働かせていないのだ
先ほどのチェックリストの中から、具体的に二つほど考えてみたい。自制心が働いている場合と、崩壊してしまう場合の心理状態の差に注目して欲しい。
ケース1 友人との待ち合わせの場合
自制心が働いた場合
たとえば、土曜日の午前11時にハチ公前で友人と待ち合わせをしているとする。その時、ハチ公の銅像までは電車を乗り継いで、家から50分かかるとする。普段から身支度に1時間程度かかることを考えると、午前9時には出発の準備を始め、10時には家を出なければならないはずである。その前に朝ご飯を食べて、お風呂に入るというオプションを追加するならば、遅くとも8時に起きて行動を開始する必要がある。
タイムスケジュールが決まったら、早々に入浴し、8時に目覚ましをセットしたら就寝する。あとは予定通りに行動するだけ。簡単である。
自制心が崩壊した場合
しかし、ことはそう簡単ではない。ここのところ忙しく、見られずにたまったドラマもある。明日は久々の休みだし、少しぐらい夜更かしをしてもよいか。と就寝時間が遅くなる。ハッと目が覚めると、朝の9時。今からすぐに身支度すれば、待ち合わせには間に合いそうである。しかし、昨晩風呂に入らず寝てしまったので体がベタつくし、腹も減った。まずはシャワーでも浴びてからモーニングコーヒーでも飲みたい衝動に駆られる。
ここでどう振舞うかが最大のポイント。友人は午前11時にハチ公前に現れるはず。なぜなら約束なのだから。約束は絶対に守らなければならないと道徳の時間にも習った。しかし、相手は気心の知れた友人である。少々遅れても彼なら許してくれるのではないか。という「甘え」が脳裏に浮かぶ。
よしシャワー!!これで、見事自制心は崩壊である。この結果、私たちは想像を超える様々なものを失うに違いない。
ケース2 夏休みの課題をやり切らなかった場合
もうひとつ、チェックリスト5、1か月先の課題や、学校の夏休みの宿題がやり切れない(やり切らなかった)場合についても見てみよう。
自制心が働いた場合
そもそも、仕事でも学業でも、人間が集中して進められる時間には限りあるということを知っておく必要がある。8時間、9時間と机に向かうことはできても、そんなに長時間、効率的に時間を使えているわけではない。
夜中まで机に向かって勉強はしたが、たいして進んでいないといった経験や、勤務時間を超えて残業をしてみたが、思ったほど捗らなかったという経験は誰しもあるではないだろうか。
そうだとすると、課題の提出期日に余裕があるならば、毎日少しずつ進めていけば、集中力を持って、計画的に勉強を進めていける。その課題や宿題を仕上げるのに全部でどれぐらいの時間がかかりそうなのか。たとえば、20時間かかる見込みなのであれば、1日1時間で20日間。2時間取れれば10日で完成する。
とりあえず10日の計画で毎日2時間ずつ始めてみたところ、思いのほか捗らず、さらに10時間を要することもあるかもしれない。しかし、これも一旦計画を立て、具体的に行動に移すことによってはじめてわかるのであり、リスク管理まで含めて自制心を働かせていけるとベストである。
自制心が崩壊した場合
一方、本来怠惰な人間が無計画に事をすすめると、とりかかりが遅くなる。やらなくちゃ、やらなくちゃと思っているうちに、時間はどんどん過ぎ、気づけば締め切り3日前。自分は「お尻に火が付かないと頑張れないタイプ」などと気休めを言いながら、長時間の作業に取り組むことになる。
しかし、前述のように、人間の集中力は思ったほど持続しない。やるべきことを細分化して進めていけば、労力は最小限ですむものの、細分化できるほどの時間が残されていない。学校から出される解答付きの課題であれば、えーい「答えを見て解答を写してしまえ!!」という暴挙に出たことがない人は、ほとんどいないのではあるまいか?そういう私だって、答えを写した記憶はある。
仕事でも、何とか辻褄合わせをしよとそれなりのものをまとめて提出するが、上司の目も節穴ではない。手を抜いた仕事は一見してわかってしまうものである。やるべき課題がわかっていたにも関わらず、自分の行動を律して進めていかないと、自分自身のスキルUPができないという自分の中の問題だけにとどまらず、社会的な信用を失うという恐ろしい結果が待ち構えている。
目標を明確にして、具体的な行動に紐づけする。
最後に、「自制心」を育くむ具体的なセッションについてご紹介しよう。
「自制心」が類型的に高いと言われている人の特徴として、ある程度スポーツを究めた人があげられる。特に日々の練習を必要として、定期的にパフォーマンスについてのフィードバックが提供される形でスポーツに取り組んだ人は、高い「自制心」のスコアを記録する。
就職の採用の場面で、体育会系の学生を採用すると良いと言われるのは、礼儀正しさや規律を重んじるという性格的な部分だけでなく、スポーツを通じて培った「自制心」を働かせてくれるという期待の部分も大きい。
そうだとすると、「自制心」を育むには、スポーツの鍛錬に用いられる技術がヒントになる。スポーツにおいては、失敗がつきものである。特にそれをはじめた段階では、なかなかうまくはいかない。その時に、その失敗の原因を何と捉えるのがその後の上達にとって極めて重要になるという。
失敗の原因を、不可抗力や他責に委ねる傾向のある選手は大成しないという。練習環境が不十分だから、資金が不十分だからなど、自分以外に失敗の原因を求めてしまうと、自分ではコントロールできないことが原因となってしまうので、改善の余地がない。
そうではなく、失敗の原因を自分の練習不足といったコントロール可能な原因に帰するような考え方を持つことが大切である。そして、どうすればその失敗が改善され取り除かれるのかの具体的な行動の手がかりを考えてみるのである。
「自制心」というと、どうしても忍耐や我慢といった根性論のイメージがつきまとうが、間違った方向にどれだけ忍耐や我慢を続けても意味がないことが最近の研究で明らかになってきた。
たとえば、スポーツ中の水分補給は絶対にNG。精神のたるみが水分を欲するのだと長年信じられ、炎天下の中一滴の水分も取らないことが正しいことだとされてきたが、現代の医学では熱中症を引き起こすだけでむしろ体に害悪であると、今や積極的な水分補給が推奨されるようになったことは記憶に新しい。
常識とされていることも、すべて鵜吞みにするのではなく、自分の置かれている状況を客観的に分析し、実行可能なプロセスに細分化をした上で、一つ一つ改善をし、結果に結びつけていく姿勢こそが「自制心」の正体なのである。
どんな人間にも目の前に課題があり、それを日々超えていくことが求められるが、それが「できない」ことの原因を自分の行動に紐づけ、毎日少しずつその行動を積み重ねていける人格が「自制心」の備わった人格であり、いかなることも成し遂げる非認知能力に長けた人物ということができる。
さっそく実践してみていただければと思う。
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