人権って何? 人権はみんな当然に持っているの?公民を極めて合格を狙え!! 今さら聞けない公民!!

2020年12月13日公民,社会

中3になると、1学期の半ばから公民が始まります。学習期間としては半年程度にも関わらず、入試では2割から3割程度の配点が与えられます。そうであるにも関わらず、何だか意味もわからず、丸暗記をしてテストに備えようとする生徒が多いことに驚きます。そこで、公民という科目の大きな単元である人権を理解するのに必要なイメージを説明しておきたいと思います。

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日本ではイメージしにくい人権感覚

人権と聞くと何をイメージするでしょう?教科書では、「人間が生まれながらにして持っている権利」などと説明されています。現代を生きていると、生まれ落ちた瞬間に様々な権利が付与されていることにまったく気づきません。6歳になると学校に行き、毎日面倒くさい宿題をしなければならない。何て不幸なことなのだと嘆く生徒もいますが、小学校、中学校に行って勉強できることが憲法上保障された人権であり、これが恵まれた環境であることにも気づかず、悪態をつくという悲しき現状があることもまた事実です。

それでは、人権とはいったい何でしょうか。

自然界を見ると人権がわかる?

理科の授業で食物連鎖について学習しますが、自然界は食うか食われるかの弱肉強食の世界です。人間だって昔はそうでした。マンモスに踏みつぶされたり、サメに襲われたり、火や武器を手にするまでは人間などは獰猛な動物の前ではひとたまりもなかったことでしょう。すなわち、すべての生物は力のあるものがトップに君臨し、力のないものは支配される関係にあるのです。

人類においては、その時の権力者が民を支配します。世界に目を向けると、絶対王政という言葉に代表されるように、王は神としてその命令は絶対的なものでした。日本史でも蘇我氏の台頭、藤原氏の台頭、(以下省略)など政治権力と結びついた権力者が支配をし、弱き民は奴隷のような暮らしをしてきていたのです。

このような場合の民には人権は認められているのでしょうか。農民に生まれた者は、一生農民でいることが決まっている。極めて例外的な場合、例えば豊臣秀吉などは農民の地位から天下人に上りつめましたが、そんなことは通常ありえないのです。生まれながらにして、自分の職業が決まっている、住む場所も決まっている。気分で引っ越すことなどはできません。今のようにどこの高校に行くのか、どこの大学に行くのは、どんな職業につくのかを選ぶことはできません。それが人権が保障されていない状態ということです。

国王は神か?それとも人間か?

王は神であるとされていた時代があります。日本では天皇を神だとしていた時代もあります。もし、本当に神ならば、その存在の決定は絶対です。逆らうことは許されません。しかし、本当に神なのでしょうか?王も天皇もみんな血の通った人間だと認めた瞬間、おかしなことが起こります。王も奴隷も同じ人間なのに、なぜ奴隷だけ一方的に搾取されなければならないのか、生まれによってそのような差別が許されていいはずがない。国王だって無条件に人の生命、財産を奪えるなどというのはおかしい!!と考え始める人々が出てきたのです。

その一番最初の記録が残っているのが、マグナ・カルタ(イギリス 1215年)という文献に記されています。名前ぐらいは聞いたことがあると思いますが、同じ人間の間で変な差別があるのっておかしくない??って人類が初めて気づいたことが書いてある文献なので、ものすごく重要なのです。日本では武士による封建体制華やかな鎌倉時代にイギリスでは「人権」という概念が登場してきています。

革命って何なの?

世界史では、色々な市民革命を学習します。イギリスの名誉革命、アメリカの独立革命、フランス革命などですが、これらはいったい何をしていたのか。何が革命的だったのか。これは、国王や貴族が独占していたありとあらゆる権利を、民が力づくで奪い取っていった歴史なのです。

例えば、国王は人を処刑する権限を持っています。したがって、極端な話、国王がある人間を気に入らなければ死刑にできてしまうのです。これを今の生活に置き換えると、何も悪いことをした覚えはないのに、突然警察がやってきて、自分を逮捕して刑務所に連れていかれ、理由も告げられないまま殺されてしまうことを意味します。怖くないですか?でも人権がないということはそんな不運も受け入れなければならないことを意味します。

王様の気分で処刑されてたまるか!!仮に処刑するとしても、あらかじめ決められた法に基づいて、適正な手続きによらなければならないという形に国王の権限を縮小したい。そして、行きつくところとしては、処刑の権限を国王ではなく、民の手元においておきたい。これが市民革命の悲願だったわけです。これが実現された社会のことを何というか。それが「国民主権!!」です。

こういった背景を何も知らず、国民主権と答案に書いていたあなた、もっと掘り下げて勉強しましょう!!

日本では人権を獲得するための革命は行われたのか?

日本でもこのような市民革命は行われていたのでしょうか?歴史の中で必ず聞いたことのある、自由民権運動というものは、言論の自由や集会の自由などを求めていましたので、一応人権のための戦いと位置付けることは可能です。しかし、欧米の市民革命と異なる点は、君主である天皇を国家の中心に据えたままであることを前提としている点、天皇から権限を奪いたいといった動機が日本国民の中から自発的に芽生えたことはなかったのかもしれません。いまだに、天皇をはじめ、総理大臣、国会議員、公務員というと偉い人、正しい人といった感覚をいだく日本人が多いと思います。「お上」といった表現にもそれが表れていますが、日本人は上から支配されることを根源的には嫌いではない国民だと思います。したがって、本当の意味での市民革命は経験したことがない。水戸黄門の葵の御紋をカッコいいと思ってしまう感覚って人権保障の観点から言うとかなり危険です。副将軍である白髪のおじいちゃんの基準で、あいつは悪い奴、助さん、格さん、懲らしめてやりなさいって理由も聞くことなく攻撃されたら、本当に勘弁です。

それでは、人権はどのように獲得したのか。日本が太平洋戦争に敗れ、アメリカのGHQ主導で作られた憲法草案の中に、人権が明記されていました。日本は戦争に敗れてもなお、天皇主権を維持したいとアメリカに懇願したそうです。しかし、戦争に駆り立てた精神的支柱を主権者として存続させてくれるほど、アメリカは甘い国ではありません。が、天皇の命を奪わず、象徴という形で天皇制が維持されているだけでも、アメリカからするとものすごい譲歩だったのだと考えることができます。

人権はある日突然降ってきた

冒頭で、日本ではイメージしにくい人権感覚と述べましたが、日本の中にいて人権を理解しづらい理由はこのようなところにあります。日本は人が生まれながらにして有する権利を勝ち取っていないのです。ある日突然、アメリカから貰ったのです。したがって、ありがたみも感じにくいのです。逆に誰かに支配されている方が心地よいのかもしれません。今でも何か問題が起こると、すぐに政府が、県が、市がどのような補償をしてくれるのか、どのように助けてくれるのかという議論になりがちですが、政府は国民を助ける機関ではありません。国民の生命や財産を簡単に奪うこともできる権力を持った存在なのです。

コロナ禍においては、GOTOトラベル、GOTOイート、持続化給付金などで、政府は多くの財政出動をしてくれました。助かりました、ありがたい。本当にそうでしょうか?そのお金はどこから出てきたのでしょうか?コロナが終息した後に、大増税をするつもりならば、こんな不公平な給付は本当に必要だったのでしょうか?

最後は少し時事的なネタになりましたが、公民という科目は、このようなことをしっかりと考えるための教科です。自由権、平等権、社会権などと用語を暗記しても何の役にも立ちません。

人権の本当にさわりだけになりましたが、以前少々専門家として齧っていたこともありますので、みなさんの公民リテラシーを少しだけあげるつもりで、何回かに渡って言及していきたいと思います。

2020年12月13日公民,社会人権,公民,社会

Posted by peroparo