あなたに自己肯定感はある? 非認知能力を育む方法とは??

2023年7月11日非認知能力

世界的ブームの非認知能力!でも習得法はどこで教えてくれる?

ノーベル経済学賞を受賞したヘックマンがアメリカの社会格差を解決する有望なカギとして幼児教育における非認知能力に言及して以来、日本でも非認知能力が教育や社会の課題を解決する糸口のひとつとして、また、子どもの将来の成功を予測し得るものとして注目されるようになった。

ジェームズ ヘックマン氏

人生の成功には
IQより非認知能力!!

雑誌で特集が組まれたり、非認知能力をタイトルにした文献がいくつも出され、日本の幼児教育界は、非認知能力がブームともいえる状況になっている。

かつて、私自身もこのブログの中で、あなたに非認知能力はある?チェックテストで確認してみよう。という記事を書いたことがあるが、この記事へのアクセス数が他の記事と比べて、常にトップクラスであることからも関心の高さが伺える。

 しかし、実際に非認知能力を育てようという実践の場に立つと、非認知能力とは何であり、具体的に何をどうすれば良いのかといった具体策は示されていない。

世界各国で非認知能力を身につける教育が行われ、追跡調査も行われているようだが、我が子が成長しきった10年後に「あの時ああすべきだった!!」などと言われても、時すでに遅し。今、目の前にいる我が子に何をすべきか。それを知りたいのが人情というものであろう。

幸い、私のもとには、2023年現在5歳と3歳になる娘が二人と、運営する学習塾に幼児から中学生までの50名前後の生徒が在籍してくれている。学習塾は点数や偏差値、すなわち「認知能力」を向上させることが本来の役割であるが、非認知能力こそが、認知能力の向上を下支えするのであれば、少しでも非認知能力を高める工夫を取り入れたいと考えるに至った。

そこで、非認知能力なるものに関するこれまでの知見を今一度整理し、実際に我が塾で実践している試みをお伝えする中で、皆様の子育ての一助となればという思いで、この文章をしたためる。

最も大切な自己肯定感??でも日本人にほとんどないって本当?

非認知能力というものは、自己肯定感、自己効力感、自制心、柔軟性、共感力など、様々な要素があげられる。そして、その中でもっとも重要な要素であるにも関わらず、特に日本人には欠如していると言われる「自己肯定感」から、取り上げてみたい。

自己肯定感という言葉を検索すると、実に2000万件もヒットするパワーワードになっており、この言葉自体を聞いたことがある方も多いのではないだろうか。自己肯定感の意味を調べると、「自分自身を受け入れ、自分を大切にし、自身の存在自体に価値を認めること。」らしい。

自己肯定感が持てると、健康な心の発達や幸福感の向上に大きな影響を与えるという。なぜなら、自己肯定感があると、自分に自信を持ち、自分の能力や価値を認識し、他人の評価に左右されずに自分の人生を積極的に生きることができるからだそうだ。

ただ、日本人でこれを持ち合わせている人は本当に少ないだろうと感じる。自分に自信を持っていると「傲慢だ」と言われかねないし、つい先日までマスクが外せなかったのも、コロナ感染が心配というより、他人の評価を気にしてという側面も否めず、国民性ともいうべきものなのかもしれない。

実際に、2015年に国立青少年教育振興機構というところが調査した国際比較データに次のようなものがある。

日本の高校生は、「私は勉強が得意なほうだ」「私は人並みの能力がある」という問いに対して、「とてもそう思う」「まあそう思う」と回答した者の割合が4か国中で最も低い。一方、「自分はダメな人間だと思うことがある」の問いに対して、「とてもそう思う」「まあそう思う」と回答した者の割合が高く、米中韓を大きく上回っている。

どうして、日本の子どもの自己肯定感は低くなってしまうのか。その原因を分析すると次のようなことが考えられる。一つの要因として、日本の教育においては、間違いを犯すことや失敗することが許されにくいという傾向がある。学校の授業で手を挙げて発言することが苦痛だと感じる生徒に、その理由を聞くと、答えが間違っていたらどうしようという不安に耐えきれないという。

本来、学びとはトライ&エラーを繰り返し、間違いを修正していく過程で成就していくものだと思うが、子どもたちはそう思っていない。無意味な完璧さを求める傾向が強く、失敗や弱点を自己評価においてマイナスの要素として捉えてしまうようだ。

さらに、日本の文化においては、控えめであること、謙遜することが美徳とされることもあり、自己主張を抑え、他者との調和を重んじる風土の中では、自分に自信を持ち、他人の評価に左右されずに自分の人生を積極的に生きることは、「自己中心的」、「傲慢」なことであり、最も避けるべきことだと考えている節がある。

間違いや失敗を恐れるな!!今こそ失敗からの解放を

それでは、自己肯定感を築くためには、どのようにすればよいのか。ここが我々の最大の関心事となるわけである。そもそも、日本人が間違いや失敗を過度に恐れる風潮はどこから来るのか。

日本社会は古くから不道徳なことを嫌い、汚名を晴らすためには切腹という自死も厭わない特殊な武士道精神も当然のものとして受け入れてきた歴史がある。また、個人の行動や成績が集団や社会全体の評価に大きく影響を与えるという考え方があり、それは現代でも色濃く残っている。たとえば、高校野球で部員の一部に飲酒や喫煙といった非行行為のあることが発覚すると、その学校全体が大会への参加を自粛する場合があるが、これは個人の責任が集団全体の責任に転嫁されていく典型例といえる。

また、高校入試、大学入試、入社試験も入る時の試験による成績評価が重要視され、そこからこぼれ落ちた者に落第とのレッテルを貼ってしまう。一度成功のレールから外れるとなかなか元に戻るのが難しく、常に慎重な綱渡りが求められる。

そうだとすると、間違いや失敗を恐れるのは当然であり、およそ自己肯定感など育ちようもないようにも思える。しかし、それでは、失敗を恐れるあまり子どもたちの行動は萎縮し、自分らしさを発揮することを避けるようになってしまう。その結果が前述のグラフにもよく表れているが、このような足の引っ張り合いを日本国内で続けていても、優秀な人材を作り出すことはできない。

ここで、自己肯定感を再定義してみたいと思う。自己肯定感とは、自分自身に対する積極的な態度を持ち、自分が成長できる可能性を信じることから生まれるものと捉えたい。そうだとすると、自分の長所や才能を認識するだけでなく、自分の短所や欠点もすべてありのままに受け入れることが重要ということになる。間違ってもいい、失敗してもいい。完璧である必要はない。まず、ありのままの自分を受け入れる。これこそが自己肯定といえよう。

中学生以降になると、テストで順位が出てくる。したがって、否応なしに他人と比較することを強いられるように思うが、他人と比較ばかりしていると自己肯定は揺らいでしまう。試験の点数、偏差値、順位は他人と比較するためのものではなく、昨日の自分自身からどれくらい進歩をし、成長をしたのかに焦点を当て、自分自身との競争に集中する。できなかったことを悔やむのではなく、昨日より成長した部分を探し続けることで、今日の自分を強く肯定することができる。そのように考えたい。

まずは、親自身が自己肯定感を持てているかを確かめてみよう。

失敗を恐れ、完璧を求める日本という環境で育った我々が非認知能力を育むための心構えが少し見えてきたような気がしないだろうか?

それでは、私たちは親として、講師としてどのように子どもたちに関わり、自己肯定感を高める助力をしていけばよいのか。この具体的実践例を述べて、本稿を終わりにしたい。

ただ、前提として、私も、そして今この文章を読んでいるあなたも、日本という環境で成長を遂げたのであれば、恐らく自己肯定感は低いということを念頭に置く必要がある。休日に算数の勉強を教えて欲しいと言い出した我が子が、簡単の計算問題を間違えていたとする。その時、あなたはどんな気持ちになるだろう。

また、間違えた。きちんと問題を確認して途中式を書かないからだ。こんな問題を間違えているようでは次のテストも期待できない。ああ イライラする!!と思ったあなた。完璧主義が発動中。その思いを子どもにそのままぶつけると、子どもは「また間違えた。また怒られた。自分はダメだ。もう勉強なんてしたくない。」自己肯定からは正反対のマインドに落ちていってしまい、お母さんに聞いた自分が馬鹿だった!という反抗につながる。

自己肯定感を高めるためには、「子どもの成功や達成を認め、子どもに対して肯定的な言葉をかけることも効果的です。」などと言われるが、実践することは難しい。かつて担当した生徒の母親から、「あの子のどこに成功や達成があるというの?肯定できるところなんて1ミリもない。」という悲しい言葉を聞いて驚愕したことがあるが、そんな気持ちになったら、まずは、我が子が生まれたあの日を思い出してみよう。

我が子が生まれたあの日、どんなに嬉しかったか。どんなことがあってもこの子を守り、幸せにしてやりたいと誓ったあの日。事故にも遭わず、大きな病にもかからず、こんなに大きく成長してくれた。それだけで十分ではないか。我が子が元気で健康だからこそ反抗もし、憎まれ口も叩けるのだ。それがどんなに幸せなことか。と親であり講師である我々自身が今の状況をプラスに捉えること!!これがスタートライン。

そう。子どもの自己肯定感を高める前に、私たち自分自身の自己肯定感を高めることが先決なのだ。子どもは親を映す鏡と言われる。イライラしてしまう子どもの姿は親である私そのものの姿なのだ。子どもが親から受ける影響は想像以上に大きい。その親自身に自己肯定感がなければ、子どもにも育めないのはむしろ当たり前のことではないか。失敗を嫌う完璧主義が出そうになったら、深呼吸して、今の子どもの状態をまずは認めよう。今この場で机の前に座り、学校の宿題に取り組もうとしているこの子は無条件ですばらしい。

簡単な計算問題を間違えてしまった。「何度言えばわかるの!?」という思いをぐっとこらえ、間違いたポイントはどこにあったのか。次に同じような問題が出た時に間違わないためには、いったいどんな注意をしていけばいいのか。過去を活かして未来につなげる。このマインドを親子で共有することが、自分自身に対する積極的な態度を持ち、自分が成長できる可能性を信じる、自己肯定の姿勢と言えるのではないだろうか。

具体的な習慣化のステップを構築して自己肯定感を育もう!!

まとめよう。私も日々研鑽を重ねる必要があるが、親として、講師として、常にこの視点でアドバイスをすることを心掛けている。今この瞬間までの過去を明日以降の未来の成功につなげるために今何ができるかを考える。親や講師から過ぎたことを否定され、責められても何も生まない。子どもは明日を今日より良くするためにどうするか?という視点からの支援や共感を周囲から絶えず受け続けることで自己の価値を確認し、自分を大切にする意識が養える。そう考えながら、子どもと接するようにしている。

最後にある生徒のエピソードを紹介しよう。この春に中学生になったが、まったく宿題をやらず、なかなか成績があがらない生徒がいた。その時に、なぜ宿題をしてこなかったんだ?そんなことじゃ成績があがらないぞ‼とついつい言いたくなるが、これは、失敗を許さない完璧主義の思考。

ではどうするか。次に宿題をやってくるためには、今日からどうするか。人間は習慣の生きもの。一日の行動のうち、7~8割程度は習慣化されたことしか行っていない。なぜご飯を食べるのか。なぜ歯を磨くのか。なぜお風呂に入るのか。わざわざ意味なんて考えていない。習慣になっているからだ。

そうだとすると、宿題を習慣化しないと、来週もおそらく忘れてくるはず。そこで、今日塾から帰ったら、まずカバンの中のものを全部机に出して宿題のページを開いておこう。そして、学校から帰ってテキストが目に入ったら1問でもいいので解いてみる。自分一人でやるのが大変ならお母さんにも協力してもらおう。毎日お母さんが夜ご飯を作り出したら、同時に君も勉強をはじめてみる。お母さんの習慣に乗せてもらう。

こんなアドバイスをした。それから2か月後、その生徒は今では宿題を忘れてくることはなくなった。しっかりと予習ができてくるので、学校でも積極的に挙手をして発言をしていると嬉しそうに語ってくれた。そう、あんなに宿題ができないと悩んでいた生徒は明日をよりよくするための習慣を手に入れた。その結果テストの点数もあがって来たから、自分もやればできるという自信もつき、そんな自分を認めることができている。

自己肯定感が育ってくると、その後に困難や失敗に直面した際にも強い心を持ち続けることができるという。なぜなら、自己肯定感を持つということは、どんな困難な時も自分自身を肯定し、受け入れ、自信と自己効力感を高めることで、困難な状況に立ち向かう勇気を養うことに他ならないからである。

このように、自己肯定感があると、その他の自制心、共感力、柔軟性など他の非認知能力を身につけることも容易になるという点で、自己肯定感はすべての非認知能力の中でも最も重要な要素だと考える。残念なことに、日本社会で暮らす者にとっては、最も持つことが難しいマインドであるだけに、周りの同調圧力に屈しそうになる場面もあろうかと思うが、子どもの自己肯定感だけでなく、私たち自身も自己成長や心の健康を促進し、幸福な人生を築くために、自分自身を受け入れ、肯定し、自己価値を高める努力をすることで、より強く、自己実現に向けた道を歩んでいきたいものである。

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Posted by peroparo